一連の Apple v. サムスンの事件のうちの一つで、地裁で争われていた債務不存在確認訴訟についての判決文(平成26年3月25日判決)が裁判所ウェブサイトに掲載されました。事件番号は、平成24(ワ)9695です。
この事件は、サムスンの特許権侵害による損害賠償責任を負わない旨の確認をApple側が求めた訴訟です。こちらにも争点の一つとして FRAND 条項に関わるものがありました。しかし裁判所は結局、当該争点には触れず、Appleはサムスンの特許権を侵害していない、として債務不存在の判決をしています。
FRAND の事件としてはしたがって、あまり見るところのない事件となってしまいましたが、非侵害の結論を出すところで裁判所は明細書の記載不備を指摘しており、この点は実務家としてはケアしておくほうがいいかも知れません。
具体的には、利得に関係する情報を計算するにあたり、
(1)計算に用いる因子を受信し、
(2)当該受信した因子を用いて、ある計算式にて利得に関わる情報を計算する
という工程について、この計算工程全体で、「利得に関係する情報を受信」したと言えるかが問題でした。裁判所は、「計算」等の普通の語の意味からしておかしいと判断しています。辞書的な意味を参酌して明細書の記載不備を指摘した事件の一つと言えるかと考えます。
以 上